第14章 意味のわからない話
最悪の展開だ。
冨岡くんは無一郎くんと話が通じるはず。その流れは自然だ。
……まだ本人に伝えなかっただけマシと思うしかないか。
冨岡くん…何を考えていたのか。今も昔も変わらないな。
「……なんとなく話が見えてきた」
春風さんが小さく呟く。
…ええそうでしょうね。私より感の鋭いあなたならきっとわかるでしょうね。
「有一郎くん、君はどこまでを冨岡くんから聞いたんだい?」
「…霧雨さんは無一郎の大切な人なんだって聞きました。」
……ん?
「無一郎、毎日調子が悪いみたいで…。話を聞くに、あなたに会えないのが嫌みたいなんです。」
「……」
「同じクラスの女の子にストーカーレベルで付き纏ってるし…」
「……」
「しかもその子、霧雨さんにそっくりなんです」
いや、なんか、すっごい話がこじれてませんか。
「正直、無一郎が年上でこんな美人な人とそうなんだとは知らなかったけど…!!」
ここら辺になると、私は失神しそうだった。春風さんは遠い目で明後日の方向を見ていた。
「無一郎のためにも、会ってやってほしいんです!」
有一郎くんが純粋な瞳で言い切った。
…おお……もう、どこから訂正していけばいいのか……。
「ゆ、有一郎くん…。」
「…はい。」
「最初に言っておきます。」
とりあえずは根本から、だろう。
「私と無一郎くんは断じてそのような関係ではありません!!!」
覇気を込めて言うと、有一郎くんは驚いて目を見開いていた。
「いいかな?おばさんね、もう25歳なの。愛情は人それぞれだけど、年下はタイプじゃありません!」
「うん、そうですね。この人、10年ほどお付き合いしている彼氏さんもいらっしゃるのでそこは信じてください。」
「えっ!?そうなんですか!?」
ありえない、とでも言いたげに有一郎くんは驚いていた。
冨岡くん。せめてそこは説明をしておいてくれよ。すごく大変な誤解を生んでるじゃないの。