第14章 意味のわからない話
「お願いします」
有一郎くんからが頭を深々と下げた。
「弟に会ってやってください」
春風さんは無一郎くんのことを知らない。
だから、私が話すしかなかった。
「その前に、いくつか知りたいことがあるの。」
私は本質をつくようなふりをして話の内容を逸らした。
「どうして、君は私を知っているの?」
「……それは」
「初めましてでしょう、私たち。あなたは私の名前も電話番号も知っていた。いきなり頭を下げられてそんなことを言われても、私は何も納得ができないの。」
有一郎くんは口籠もった。
「…そ、それは……」
「……」
「…名前は、無一郎から…電話番号は……。」
口が閉じる。
私はじっと待っていた。
「とっ……冨岡、先生…が……」
「へぇ???」
突然出てきた聴き慣れた名前に間抜けな声が溢れでた。
「と…み、…おか、くん??」
「あ、えと、……色々あったんですけど。」
有一郎くんが言うには、こうだ。
二人は兄弟揃って将棋部らしい。冨岡くんはOBのよしみでよく将棋部に顔を出すとのこと。
無一郎くんの元気があまりにもないので心配した冨岡くんが事情を聞いた。有一郎くんもその場に居合わせたものの、何を話しているのかわからなかったとのこと。
ただ、頻繁に出てくる“師範”という単語。また、それを表しているであろう“霧雨”と言う人物の名前。
無一郎くんのいないところでこっそり冨岡くんに聞いたらしい。そこで、話すより会う方が早いとのことで彼が携帯番号を渡した…。
「さん落ち着いて」
「アイツぶっ飛ばす」
「どうどうどう」
全部冨岡くんのせいじゃないかああああああああ!!!!!
なんで電話番号勝手に教えたああ!?勘弁してくれよあああもうぶん殴ってやる…ッあの野郎……!!!