第95章 僕の師範ー昔の話ー
驚いて顔を上げると、鉄穴森さんは僕に一枚の紙を握らせた。
「ここにアマモリの家が記してあります。」
「やっぱり知って「お静かに。」」
彼は僕を制した。
「聞かれるとまずいのです。彼はこの里を追放されていますから。」
「…じゃあ、里にはいない……?」
「わなりません。追放されてからその場所に住んでいたのは仲の良かった数人が知っていますが、長い間誰も姿を見ていません。加えて今回の騒ぎがありましたから…。
もういない可能性が高いでしょう。ですが、今のあなたにはぜひ彼に会っていただきたい。何か手がかりがあるやも知れませんし、一度その場所に行ってみてください。」
僕はその言葉に頷きつつ、疑問を口にした。
「この人はどうして追放されてしまったの?」
「……元はこの里の住人ではありませんでした。子供の頃に母親に連れられて外からやって来たのです。それはそれは貧しい親子でしたよ。かわいそうなくらいね。
母親が亡くなったあと、里親がここに住まわせていたのですが…。アマモリは鍛冶場をのぞき、なんと完璧に刀鍛冶の技術を再現してしまったのです。
才能があったのだろうと思いますが、鬼殺隊のこともろくに知らない外から来たアマモリに技術を教える者はおらず…。
里長は苦渋の決断でアマモリを里から追放されました。刀鍛冶たちは自分の技術を盗まれたと、そう思ったしまったのです。」
事の経緯を聞いて、ひどい話だと思った。
何年前の話かは知らないが、よほどの大事だっただろうに僕は何も知らない。他の人たちは知っているのだろうか。
「アマモリは良い奴で、反対する者もおりましたがあいつはある日突然里から出ていったのです。
時透殿、あなたは知らないのかもしれませんが…アマモリはあなたと深い関係にある。」
「僕と?」
「ええ。」
鉄穴森さんは、一番小さな声で教えてくれた。
「アマモリはあなたの師である先代の霞柱…霧雨殿を担当していた刀鍛冶なのです。」