第95章 僕の師範ー昔の話ー
いろんな問題を残したまま刀鍛冶の里に来た。
里の様子をみたいというのもあったし、からくりを壊してしまったことを小鉄くんに謝りたかった。
小鉄くんは僕の謝罪を受け入れてくれたように思えた。
その後は僕が壊してしまった縁壱零式を修復するための手伝いをした。
休んでいると甘露寺さんがおにぎりを持ってきてくれた。彼女もここに来ているとは思わずに驚いた。
そうして和やかな空気が流れたので、僕は切り出した。
「ねえ、アマモリって人知らない?」
沈黙。
側にいた小鉄くんと鉄穴森さんは黙ってしまった。柱たちの前で師範の名前を出したときと同じ。
「アマモリ?無一郎くんの知り合い?」
「いや…僕も詳しくわからないんですけど。」
一応、不死川さんの名前は伏せて事情を話した。
「よくわからないけど…この里に、そのアマモリさんっていう人がいるのかしら?」
「いませんそんな人!!」
大きな声にビックリした。声の主は鉄穴森さんだった。
「俺もアマモリって人は知りませんねぇ。」
「あらぁ、小鉄くんもなの。」
どう考えても鉄穴森さんの様子はおかしい。それなのに気づかない甘露寺さんはさすがだ。
多分、小鉄くんは気づいてるけどバカらしくてわざと突っ込んでないんだろうなあ。
「…そっか。知らないか。」
僕も気づかないふりをした。
それが平和だと思ったから。
そこらへんでもう踏ん切りがついた。
もう、僕は師範のことを諦めていた。
そう思っていたけど里から出る寸前、鉄穴森さんが僕の肩を叩いた。
「時透殿、念のために刀の様子を確認したいのですが少々よろしいでしょうか?なんせあなたの刀を担当したのは初めてでしたから…。」
「あぁ、いいよ。」
「すみません、ではあちらの方に…」
そう言われて鍛冶場に連れていかれた。僕は刀を腰から抜こうとしたけど、鉄穴森さんに止められた。