第14章 意味のわからない話
落ち着け。
とりあえず落ち着け。
この状況に、心を消せ。
「こっ、こんにちは…。」
「こんにちは〜。」
「…コンニチハ」
私、春風さん、そして有一郎くん。
なぜこんなことになったかというと…。
時は二日前の夜に遡る。
ある日突然、有一郎くんから電話がかかってきた。その時、またかけ直してくれと言ったのだが、彼は本当にかけなおしてきた。
会って欲しい、会ってくれるまで頼み続ける…と言うので、私は実弥に助けを求めた。
が、彼は苦い顔をした。
『俺には何かを言う資格はない』
何だそれ。とりつく島もなかった。
そこで春風さんに泣きつくと、もし会うのなら、その場に自分が立ち会ってもいいと言ってくれたので事が進んだ。
仕事のことで話したいことがあったのでちょうどいいと思い、私からお願いした。実弥はまた苦い顔をしたが、ダメとは言わなかった。
ので、春風さんの家で謎メンツが集合することになった。
春風さんはもともと足が動かせなくて車椅子生活。満足に歩けない私でも彼の家なら快適に過ごすことができた。
有一郎くんは大きな家に驚いたようだ。落ち着かないのかソワソワしている。
「近くのケーキ屋さんで買ってきたんだけどね、ケーキは好きかい?紅茶よりジュースがいいかな、あ、モンブランが美味しいんだよ。一番栗が大きいのをあげようね。」
春風さんは来客を喜んでペラペラと話していた。
「あ、ありがとうございます」
対して有一郎くんはそれしか言わなかった。
うん。わかるよ。困るよね。
各自に飲み物と食べ物が行き渡った時、ようやく本題に入ることができた。
「さて、有一郎くんは何がしたいのかな。部外者である私が同伴していて言いにくいかと思うが、私は口が硬いからそこは安心して。」
春風さんが切り出してくれた。
有一郎くんは促されて口を開いた。
「…無一郎が、…弟が、すごく気を病んでるんです。」
「…そう。」
見れば見るほど無一郎くんに似ている。双子だから当たり前だが。
…なんとなく察していたけど、やはりその話題か。