第94章 現代版柱稽古
そうしているうちに、いよいよ稽古開始間近となってしまった。
「じゃ、作戦通りに行きましょう。」
優鈴がグッと親指を立てる。
「そんで生きて会おう。」
「え、これ稽古だよね?」
「なんでフラグ立てるようなこと言うんですか!?」
戦地に赴くかのような雰囲気に思わず突っ込んでしまった。不安しかない。
心がざわつくなか、全員でスタート地点に立つ。
開始の合図が鳴ると同時に、全員が散らばっていった。
さて、始まってしまったが…。
最初の10分はお互いに攻撃なし。ただ散らばるだけの時間。
入り口付近に優鈴と春風さんがいるくらいで、各自の配置は自由だ。ペアになっても孤軍奮闘しても良いとされている。
私たちのチームは逃げの手段を取るが、ずっと逃げていては稽古にならない。というか、あのメンツから逃げ続けるのはとても難しいので逃げていてもどうせ戦闘にはなるだろう。
ただ、こちらから仕掛けるのはあまりにも無謀なのでそれはしないことになった。こっちのパワー系は縁壱さんくらいだし。蜜璃は力には自信があるって言ってたけど…。どうなんだろう。
逃げて逃げて最終的にどう勝つのか、というところだがこれは至ってシンプル。
大切なのは、単純にパワーバランスが不利なだけで、私たちは別に勝てないわけじゃないということ。しのぶみたいに力が関係ない人もいる。
基本的には逃げるが、勝てそうな相手はコテンパンにしてしまえという優鈴の指示だ。つまりはまあ…言い方が悪いけど、弱いものいじめである。非常に心が痛い。
ちなみに私が勝てそうな相手を考えてみたが全く見当もつかない。今の私がどこまでやれるのかよくわからないけど、多分そんなに通用しないと思う。
初遭遇の伊黒くんとか、阿国が未知数で不安要素ではある。というか、伊黒くんと蜜璃が鬼殺隊だなんて私は知らなかった。2人も私を見てびっくりしていたし。
「憂鬱だ………」
総合的な感想を短くまとめると、この言葉しか出てこない。嫌なわけじゃないけど、私がギッタンギッタンにやられて負ける未来しか見えないのが憂鬱なのだ。
みんなの足は引っ張りたくないし、大人しくしていた方がいいだろうか。