第94章 現代版柱稽古
炭治郎くんはニコニコと笑っているけど、私は笑い事ではない。
「…ちなみにどんな話だった?」
「さんがいかに強くて格好よくて可愛くて美しくて頭が良くてたくましくて「わかったありがとう」」
まだまだ続きそうだったので途中でぶったぎった。…もはや別人すぎて誰なのかわからないレベルだ。あの子の中の私ってどうなってるんだろう。
「炭治郎くん、あんまりそれ信じないでね。」
「え?もう既に無一郎くんがありとあらゆる人に言い聞かせて回ってますけど…。」
それを聞いて頭を抱えた。
「うん…困ったなぁ…。」
「でもそれだけさんのことが大好きってことですよ。良い関係だったんですね。」
「…私にとって良いことが、無一郎くんにとって良いことだったかは分からないけどね。」
ため息混じりにぼやく。
それには炭治郎くんが首をかしげた。しまった、つい彼には関係のないことを。
「炭治郎ー!お前なに一人で美女としゃべってんだ!!」
「善逸!急に叫ばないでくれびっくりする!」
おかしな空気になったところで救世主が現れた。とんちきなことを叫び散らす善逸くんだ。
「美女…?美女ってどこに…?」
「あなたですよお姉さん!」
「わたし?」
「はい!!」
「………」
おかしいな、実弥のはお世辞だったことがこの前発覚したのにこの子のは本当っぽい。
…前みたいに気配が分かれば嘘か本当か分かるんだけど。
「お姉さ~ん、俺、稽古不安ですぅ~。」
「…そうだね。」
「手を握ってていただければ大丈夫になると思うんですけどぉ。」
「いいよ。緊張するもんね。」
差し出された手を握ると、善逸くんはニコッと笑った。
「君は素直な良い子だね。感情の起伏が分かりやすい。」
「えぇ~それほどでも~……」
そこまで話したところで、善逸くんの後頭部に何かが飛んできた。