第94章 現代版柱稽古
私が絶望していると、優鈴はどうも心配になったらしく話を進める前にこんなことを言い出した。
「以外の人も模造刀の確認して。今から時間とるから。なんかあったら今言ってね。」
その間に私はこそこそとそばにあった木の影に隠れて、アマモリくんに電話をかけた。
『もしもーし』
「あっ、よかった出てくれた…。今仕事してる?」
『いや?休みだけど。どうしたん?』
元気そうな声にホッとしつつ、私は本題に入った。
「おかしなこと聞くけど、ここ最近で鉄珍様から連絡来てない?鉄珍様に限らず、元刀鍛冶の誰かから。」
『来てないけど。』
「本当?履歴とか見た?」
『うん。メールも不在着信も留守電もなんもない。』
「ピュッ」
『え?悲鳴?なにその声?おーいキリキリちゃーん??』
絶望が絶望どころじゃないやばいものに変わってしまった。…せめて連絡くらいしてよ元刀鍛冶!!
………いやそれは無理か。
なんてったってアマモリくんは非公式の刀鍛冶。
言ってしまえば、彼は勝手に里に住み着いていただけでそもそも刀鍛冶でさえなかったのだ。
「…待って。きみ、そもそも儀式のこと聞いてる?」
『儀式!?なに、もしかして怪しい宗教団体に捕まったん!?やめてや!!俺は仏様派やねん!!南無阿弥陀仏!!!』
「そんな話してないよッ!!!」
思わず大きな声が出てしまったので慌てて口を塞ぐ。
…そうか儀式の話も聞いてなかったか、そもそもそこからか…。
「あのね、アマモリくん。実は…。」
私は地道に鎮魂の儀式のことについて話した。刀のことも説明すると、彼は純粋にドン引きしていた。
『……そんでようわからん刀を渡されて絶望したと。』
「うん。」
『…お、お互い、嫌われたもんやね……。あ、いや多分存在を忘れられてた…?それか…必要ないと思われてる……?』
「アマモリくんそれ言わないで…。私、恥ずかしくて惨めで今すぐ帰りたいの…。」
『帰っておいでよ…俺と一緒に慰めあう会やろ…。一つ800円くらいするケーキ買って食お……。』
「……帰れるものなら帰りたい。」
私は半泣きでアマモリくんの言葉に賛同した。