第94章 現代版柱稽古
模造刀とはいえ、ほとんど本物のようなものだった。違いがあるとするなら刃がないくらい。
「わ、色が変わった!」
「そこまで再現してあるのか…どういう仕組みなんだろう。」
みんな久しぶりに刀を握って盛り上がっていた。
「詳しいことはわからないけど、みんなの刀を担当していた元刀鍛冶の皆さんに頑張っていただきました〜。とりあえず完璧再現はできてるって。儀式でも使うから、大切にしてよ。」
完全再現…?
「あの…」
「ん?、なんかあった?」
「私の刀、なんか…違うみたいなんだけど…。」
渡された時からなんとなく思っていたが、全然しっくりこない。
重さも長さも違う。鍔のデザインも。柄の握り心地もイマイチだし、色は染まりはしたものの扱いにくい。
「ああ〜、そうね。そうだった。はいはい、お前の刀ね。」
「…何?」
「いや、を担当してた刀鍛冶が見つからなくて再現できなかったから新しく霞の呼吸に合いそうなの作ってもらったよ。災難だったね。」
「…お…おお…」
淡々と告げられる事実に吐くかと思った。
マジかよ。見つからなかったって嘘じゃんアマモリくん普通に今生でも生きてるじゃん。
もしかして前世のせいか。ここに来て前世の報いが来るのか。嫌われすぎだろ私。誰かアマモリくんに連絡とってくれれば…。
あっ、そういえば鉄珍様が前にアマモリくんと連絡取れないとか電話に出ないとか言ってた気がする。
ああーーーこれは私から連絡しないといけない感じですね。ていうか連絡したところでアマモリくんは日輪刀の再現なんて1人でできるんだろうか…。
やばい。終わった。誰か助けてほしい。
「…ワカリマシタダイジョブデス」
「え、いいの?」
「ハイガンバリマス。アタラシイカタナアリガトウ。」
「お前そんな喋り方だっけ。」
今すぐ逃げ返りたいところだが、もうここまで来てしまえばどうなったっていいや。
私は色んな覚悟を決めて、今日無事に帰れることだけを願った。