第93章 現代版柱合会議(仮)
あまねさんは勝手に泣きだした私に驚きもせず、ただ静かに話を聞いてくれた。
「……私は」
「…」
「私は一度に五人も生まれましたし、あなたとは状況が違うことは分かっています。」
彼女はそう前置きした。
「あなたの言う通りです。子供は恐ろしいものです。」
「…え」
「母親になったとしても全てを受け入れられることもありません。子供は、どうなるのか分からないものですし、何を言うかも想像できませんから。」
「じゃあなんで」
私は食いぎみに言った。
「何で愛せるんですか?しかも五人も。」
あまりにも私が興奮していたものだから、面白かったのかあまねさんはふっと笑った。
「私、知りたいんです。どうしたらいいのか。」
「……」
あまねさんは立ち上がり、私の隣に移動した。この人に間近に見つめられると少しドキドキする。
「どうして知りたいのですか?」
「…私は」
「それは我が子を愛したいと思っている証明ではありませんか?」
そう言われたけれど、すぐに首を横に振った。
「違います。私が楽になりたいだけです。辛いって思い続ける日から逃げたくて…。」
「例え楽になりたいだけでも、あなたは子供を愛さなくてはならないと理解している。胸を張ってよいことです。」
「…こんな、何もできていない人間の何を誇ればいいんでしょう。」
その時、あまねさんはムニッと私の頬を引っ張った。
「あなたが自信を持たなくては、誰もあなたに答えてくれません。相手も当然拒否をします。」
「…自信」
「『私なら大丈夫』と信じることです。」
「………『私だからダメ』…ではなくて?」
「はい。その真逆です。」
「………」
難しいな、というのが表情に出ていたのだろうか。あまねさんはそんな私の頬を軽く引っ張った。
「ふぁ」
「思っていたより元気そうで安心しました。」
「ふぇ?」
「けれど、笑顔でいてくれないと困ります。」
ぐいっと頬を上に引っ張られる。笑顔(物理)にさせようとしているらしい。