第93章 現代版柱合会議(仮)
頑張って話して理解してもらおう。
そうでないと前に進めない。
「まず、事前に打ち合わせしていたこと覚えてる?優鈴が言った通り…みんなの気持ちを確認したいんだよ。」
「でも!」
「そうだね。確かに、みんな優しいから鬼が私だと知ったらきっと生かそうとしてくれるだろうね。」
私が一度肯定すると、無一郎くんは初めて大人しくなった。
「だからこそ何も言わないでみんなの気持ちを確認するんだよ。どこの誰だろうと鬼は鬼だから。」
「僕は…師範は師範だって思います。」
「そうね。私は私。」
言いたいことは痛いほど分かる。
分かるけど、それでは現状が何も変わらないんだ。
「師範に生きててほしいんです、監視したりして閉じ込めて、誰にも迷惑かけないようにすればいい。だって一度も人間を食べていないんでしょう?
誰も傷つけてないし、一緒に鬼とたたかってくれてた。禰豆子だってお館様がお認めになったし、師範のことだって話せばみんな分かってくれます。」
その言い分は正しいと思う。
「………それはダメ。」
「どうして…」
「私が納得できない。」
一呼吸おいてまた話を続ける。
「もう誰も傷つけたくないと思ってる。鬼には消えてほしいという願いもある。だけど、あの“私”には生きていてほしい。」
「……」
「矛盾してるでしょう?でもね、私にはもう答えが出せないの。」
無一郎くんはとたんに目に涙をためた。
それが一粒こぼれたので、私はそれを拭いた。
「情けないけど、みんなに助けてもらうことにしたんだ。無一郎くんの意見は本当に嬉しいけど、それだと納得できない。だって私は鬼にはこの世から消え去ってほしいから。」
「…生きていてほしいとは思ってるんですよね?」
「思ってるけど、自分で答えは出せない。私にはそれを言う資格がない。」
今でも良く覚えているあの日のこと。みんなで薬を飲んだあの時。
「鬼になることは私が望んだことだから。隊律違反を犯した私には答えを出す資格が、ない。」
無一郎くんは唇を噛んだ。また泣きそうな顔をするので、大丈夫だよと声をかけた。