第92章 夜露死苦
「それってどっちの…」
無一郎くんが足を止めた時、真横の障子が開いた。
「わーお菓子だぁ、ビスケットですね!緑茶と合わせるなんて風変わりだなぁ。」
中からは満面の笑みの陽明くんが。
「…組み合わせのこと何も考えてなかった。」
「お前はいつもそうだ。あと珠世さまは紅茶がお好きなんだからそこらへんもちゃんとしろよ。」
「ハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイ……」
その後ろから愈史郎さんの説教が聞こえてきたので適当に答えておいた。
まー慣れたもんだよ私もね。何年の付き合いだと思ってるんだか。何十年どころじゃありませんのでね。
「無一郎、それ持つよ。ありがと!」
私がハイハイ言ってる隣で陽明くんが無一郎くんからおぼんを受け取っていた。
「僕はビスケットもお茶も大好きですよ~。」
「陽明くん…あなた何て良い子なの……」
優しい言葉に思わず口にすると、ハッとしたように無一郎くんが声を出した。
「師範、僕は!?僕は師範のお手伝いをしました!!」
「え?う、うん!ありがとう…ね?」
「違う!!!!!!!!!!!!!」
無一郎くんは急に叫んだかと思うとダン!!と地団駄を踏んだ。
それに驚いておぼんから手を離したが、滑り込んできた愈史郎さんがキャッチして事なきを得た。この人すげぇ。
「時透!!お前のせいで茶が台無しになるところだったぞ!!うまい茶を淹れられるのがの唯一の取り柄なのに!!!」
いやさっき紅茶にしろとか文句言ってただろ。
「あっ保健室の主!何でお前が師範といるんだよ!!許さない!!」
「黙れクソガキ!!」
「そっちこそ!!!!!」
おぼんをスライディングキャッチした姿勢のまま愈史郎さんは無一郎くんと言い合っていた。正直クソガキは大人げない。