第92章 夜露死苦
「俺なら部外者を参加させるくらいいくらでも口利きしてあげられるけど……無一郎は盗み聞きをするような子だから、神様に対しても真摯でいられるかどうか俺はとても不安だなあ。」
陽明くんは笑っていた。とても穏やかに微笑むだけで、怒っているわけでもないけど。
…でも無一郎くんには効果抜群だったようで、目にも止まらぬ速さで部屋から出て行った。
「やはり、ここら辺で元鬼殺隊を全員集めさせるのが無難かもしれないね。」
そして陽明くんは何事もなかったかのように語り出した。
「集めると言っても、どれほどの隊士がいるのか…」
「ああ、そんなに全員じゃなくていい。なるべく階級の高い…柱クラスが良い。そうして絞ったらあまり多くならないだろうし。」
「…柱クラスがそううじゃうじゃいるわけないだろ。」
「え、そんなことないですよ。みんな結構いますよ。」
私が言うと、愈史郎さんはカッと目を見開いた。
「お前の話は信用ならん!」
「シンプルにひどい。」
プンスカ怒ってそんなことを言うので、素直にショックだった。私の信頼度は地に落ちすぎている。
「さん、顔も広いし人望もありますから。みんなが集まるのは当然ですよ。愈史郎くんもそうめくじらたてないでね。」
「めくじらも何も、俺はこいつを信用しない!!」
「してよ〜…。」
陽明くんが困ったように笑うので、私ももはや笑うしかなかった。
「まあとりあえず、さんが人員を保証してくれるのなら産屋敷に呼びかけてもらう価値はありそうですね。」
「じゃあその時に“彼女”をどうするか決めるってことね。」
私がそう言うと、全員が頷いた。よし、これでこの場の意見はまとまったかな。
「あ、そうだ。珠世さん。桜くんのことについてなんですが…。」
「…そ、そうでしたね。その話をしないといけません。」
そう言うと珠世さんは遠慮がちに言った。
「桜さんからは早々にお返事をいただいております。」
「そうですか。彼はなんと?」
「……今後一切、自分は鬼殺隊のことに関わるつもりはないと。」
その言葉に私は目を見開いた。
…桜くん、天邪鬼で頑固なところがあるとはいえそんなことを言うなんて。
こういうことは誰よりも頭を使って考えてくれそうなんだけどな…。機嫌悪かったのかな。