第92章 夜露死苦
鎮魂のことは話に聞いていた。私が昏睡状態になっている間、実弥たちがしてくれたはずだ。
「舞を奉納するんだよね。呼吸の型を繰り返すって聞いてたけど。」
「そうですそうです。」
「なんだ、それなら元鬼殺隊を集めればすぐにできるな。」
「ところがどっこい。」
「何?」
愈史郎さんがほっとしたのも束の間、陽明くんがそれを覆した。
「問題はやり方って言ったよね。誰がやるのかが大切になってくるんだ。元鬼殺隊ってたくさんいるだろう?」
「…確かに」
「儀式の流れは神社で決めるとして、誰がやるのかは今一度精査しないといけないよね。それに、まだ生きている鬼もいるし。彼女のことについても話し合わなければならない。」
なるほど、と私は頷く。
「じゃあ一回みんなを集めないといけないね。」
「そうですねぇ。そういう機会が欲しい。」
「それなら、理事長に頼めばいいでしょう。」
「さすが珠世様!」
「あ、そうだそうだそれがいい」
よね、と言う前にスパーンと音がした。何事かと思ってそちらを見ると無一郎くんが立っていた。
「それ!僕がやります!」
「む、むい「師範!僕やります!僕が師範のお役に立ってみせます!」」
「待って無一郎。そして部屋から出て行って。今大事な話の途中だから。」
「霞守様!僕も今大事な話を…!」
場を落ち着かせるためか陽明くんがパン、と一度手を叩いた。
すると無一郎くんも黙り込んだ。
「盗み聞きとは卑怯な奴だな…。」
「愈史郎くんには関係ないでしょ。僕を差し置いて師範のそばにいるなんて…。」
「それが本音か。」
愈史郎さんが呆れていた。
「舞の奉納なら、僕はもう体験してるし師範のお役に立てます!そうですよね霞守様!?」
「立候補してくれるのはとてもありがたいけど…。いいかい、無一郎。」
陽明くんはにこりと微笑むと、笑顔で告げた。
「舞を奉納するのは一つの型につき一人。つまり、無一郎が参加するとさんは必然的に出番がなくなるので儀式には関わることができなくなるね。」
その事実に、無一郎くんは石のように固まった。