第13章 出会いは始まり
「あ、あの、話せば長くなるんですけど…」
「…じゃあ帰る。」
「待て待て待て」
実弥は全く聞く耳を持たなかった。
…何を意地になってるんだか。
「うん、ちょっと待とうか。この人は鬼殺隊関係者なの。どうもそうらしい。」
「……。」
そこでやっと立ち止まった実弥はじとっと憎しみを込めた視線を送る。男の子は泣き止んでいたが、またすぐにでも泣き出しそうだった。
「なんとなくわかった。あなた、勘違いしてる。」
「あ?」
「この人は継国縁壱さん。」
私が紹介すると、彼はペコリと無言で頭を下げた。
「で、私は霞柱だった霧雨です。彼は風柱でした。不死川実弥って言います。」
「…霞柱……風柱…」
じいっと彼は私たちの顔を見つめる。
「…ということ!わかった??」
「わかるわけねえだろ。」
…ああ、そうか。実弥は継国縁壱のことを知らない…のか。なんだ。てっきりみんな知っているものだと思っていた。
「…ええと、実弥は何でこの人のことが嫌なの?何で怒ってるの?」
「……お前は覚えてないのかよ。」
「少なくとも、彼に会ったことは…。」
そこまで考えて、私はある結論に行き着いた。
「…もしかして、継国巌勝と勘違いしてる?」
「……誰だよ。そいつ。」
「私の兄です。」
いきなり口を挟んできた彼に実弥が驚く。
「兄…?」
「ええ、双子の…。」
「……またの名を」
私は久しぶりにその名前を口にした。
「黒死牟」
その瞬間、実弥の目が見開かれた。
驚きなんてものじゃない。衝撃。ショック。
言い表せない感情だ。
「…君は…君たちは、兄に…傷つけられたのですね。」
「……。」
「申し訳ない。」
継国縁壱は短くそれだけを告げた。しかし、ひしひしと謝罪の気持ちが伝わってくる。