第92章 夜露死苦
いつもの無一郎くんに戻ったかと思えば、すぐにまた険しい顔つきになってしまった。
「うすコラあんコラ」
「……あのー…これは一体…ていうかどうしてこんなにたくさん人が集まったの?」
すっかりキャラ変してしまった無一郎くん以外にも、有一郎くんや愈史郎さんがいるのも理解し難いところだ。巌勝に目を向けると、彼ははあとため息をついた。
「私はついてこいとは言っていない。珠世に声をかけると愈史郎もついてきたのだ。」
「珠世様が行くのなら俺が行かないわけないだろう!」
「無一郎と有一郎は陽明に声をかけた時についてきた。」
「霞守様が教えてくれたんです。『来ないー?』って言うから、しは…姉御に会いたいから来たんだぜ。」
「……俺は無一郎が暴走したら申し訳なさすぎるから一応、来ました。」
「俺はさんに会いに行くのに声をかけなかったら無一郎に命を取られかねないから誘いました。」
なるほど。わからん。
「そう、そうなんだね。でもみんな大丈夫?ちゃんと保護者の人に許可とった?」
「うちはヨユー。神社は今暇してるしね。」
「俺も問題ない。」
「俺たちはおじさんの家に行くって言ったら普通に許可出た…」
「おうコラ」
…そっか。時透兄弟は巌勝の甥っ子だったな。巌勝の実家はこの近くにあるって聞いてたしそれなら納得だ。
けど、どーしても理解できないのは…。
「そ、それで…無一郎くんはどうしてそうなっちゃったの?」
恐る恐る真相に迫ると、無一郎くんはぎゅーと私に抱きつきながら答えてくれた。
「師範、不死川さんに惚れるからこう言うのが好きなのかなぁって。」
「………えーーーっと」
どうしよう。どう答えるのが正解なんだろうこれ。
もしかして実弥ってみんなからこう見えてるの?なんでサングラスかけてるの?なんでガン飛ばしてるの?
「……実弥は、そんな感じじゃないよね…?」
「え、こんなんだよね。」
無一郎くんがみんなを振り返る。
「俺は結構いいところいってると思いますけどね。」
「嘘でしょ!?」
陽明くんがにこやかに答えた。その内容は信じられないものだったが、誰もその言葉を否定しなかった。