第92章 夜露死苦
実弥が痛みに悶絶している隙に彼女がいる部屋に入った。
彼女は変わらず穏やかに寝ていた。やはり回復しようとしているみたいで、先ほどより顔色が良かった。
(…明日には陽明くんや珠世さんに話をつけて巌勝が戻ってきてくれる。)
だから大丈夫だ、と自分に言い聞かせた。
どうしてか恐ろしいほど不安になっている自分がいた。
一晩中様子を見ていたかったけれど、10分もすれば実弥が部屋に入ってきた。
「」
「…」
「今は寝てるんだろ?なら放っておいても問題ない。お前はもう休んだ方がいい。」
彼の言うことももっともだ。それでも離れられずにいると、小さな足音が聞こえてきた。
「うわ、なんだお前ら」
実弥が顔をしかめる。彼の足元にはどこからきたのか茶々丸とおはぎがいた。
「にやあん」
おはぎは甘ったるい声を出して私の膝上に登ってきた。…昼間は茶々丸に構ってばかりだったから、やたらと甘えてくるのはそのせいだろうか。
このおはぎの様子を見て茶々丸も怒るのだろうか、と心配になったが顔を上げると茶々丸は私の前まで来ておとなしくしていた。
「…」
「…」
「…そう」
私は頷いた。
「あなたたちが見ていてくれるのね。」
「にゃあ」
「にー」
本当に返事が返ってきたみたいだった。
私は膝の上のおはぎをぎゅっと抱きしめた。
「じゃあお願いね。ごめんね二人とも、ありがとう。」
そう言うとまたにゃーと返事をした。
それからまだほっぺが赤い実弥と一緒に寝室に戻り、布団の上で横になった。
実弥と赤ちゃんの寝息が聞こえてきて、何だかホッとして、隣の部屋で猫たちが鳴いている声も心地よく感じた。
そのおかげか、私はすぐに眠ることができた。