第92章 夜露死苦
満足げな実弥がお風呂に入ったのでその間、赤ちゃんと向き合う。
髪の毛が無駄にサラサラ落ちてきて邪魔なので一つにまとめていると、赤ちゃんはプスプスと鼻を鳴らし始めた。
「詰まってるのかな」
呼吸が苦しそうだ。
せっせと鼻水の処理をしていると呼吸がスースーと通るようになった。
「あうあう」
「何だと」
それなのに何でか泣きそうだ。
私がいるのが不快?いや、赤ちゃんってそこまで感情豊かじゃないし…。
機嫌よく寝ていたのに触られて嫌だったのかもしれない。
「ごめんねごめんね、もうしないからね。」
ぽんぽんとお腹を叩くとすぐに大人しくなった。
……。
今はこうしているのがそのうち話すようになるのか、立って歩いて走って…。『クソばばあ』とか言ってくるんでしょうか辛い。いやいや、我慢されるより言ってくれる方がいいけど。
自分があっという間に大人になったみたいに、この子もあっという間だろうな。
その時、私はどうしているだろうか。
後ろから扉を開ける音がして、振り返るとお風呂上がりの実弥がいた。もう髪の毛もちゃんと乾かしているみたいで、さすがである。
「何か楽しそうだな。」
私の隣に腰を下ろした彼は、ふっと笑ったかと思えばペタペタと私の顔にクリームを塗ってきた。
「は、あのえっとおいこれ何してんの?」
「保湿ゥ。」
「いい、いいって、もう。」
必死に手を振り払おうとしたが、やはり彼は頑なだった。
「前は気にしてただろ。こういうの熱心にやってたじゃねぇか。」
「今は全く気にしてない!もういいの!私はおばさんです!!」
「何だとこのやろう!!」
「どうして君が怒るの!!」
どれだけ犯行ても通用せず、実弥は私を畳の上に抑え込んで保湿してきた。
そこまでしてやることか。
「ちょっ、マジでふざけんなよ、パジャマのボタン飛んでったし……」
「明日探してつけてやるよ。」
なんて優しく言う実弥の視線が開いた胸元に向いていたので、ほっぺを叩いておいた。