第91章 ただ一つの願いから
怖い顔の実弥は私の手からタオルを奪った。
「貸せ、俺がやる。」
「待って!!」
彼女に手を伸ばす実弥を慌てて止める。
「離せ!よくわかんねぇけどこの人がならこれ以上この野郎に触れさせるわけにはいかねないんだよ!!」
「やだよやめてよ触らないでよ!!」
「なんで俺はダメなんだよ!!こいつはいいんだろ?!」
実弥が巌勝を指さす。
急に巻き込まれた巌勝はさっと顔をそらした。
「だって巌勝だよ!?」
「何言ってんだよ男は男だろ!!」
「実弥だって男だもー!!」
「俺は夫だろうが!!!」
ここら辺でうるさくなったのか、巌勝は私たちの怒鳴り合いを遮るように言った。
「は不死川が自分以外に触れるのが許せないだけだと思うが。」
決して大きな声でもないのに、やたらとその場に響いた気がした。
「………………」
「は、おい」
「………………」
全然そんなつもりはなかったのだが、なんか嫌だなぁとは思っていた。
まさかその理由を巌勝に言い当てられるとは…恐ろしいやつ。
私は顔を覆って床に埋まる勢いでその場にうなだれた。
「コロシテ…コロシテ……」
「……お前ってやつは」
そんな私におおいかぶさるようにして実弥が抱きついてくる。
未だかつてないほど恥ずかしいんだけれども。
「夫婦の世界に入っているところ悪いが、コイツの泥は俺がふいておいたので中に入れるぞ。」
「待てやゴラアアア!!!」
「巌勝ーありがとー!!」
そんなことをしている間に巌勝が中に入っていくので、慌てて我に返った。
巌勝は畳の上に彼女を横たわらせると、日の光が入らないように扉を閉めた。