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キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第91章 ただ一つの願いから


これで解決したのかはわからないけど、何となく雰囲気が和んだ。


「んん〜」


その時、赤ちゃんが声を上げた。
顔を見れば今にも泣き出しそうだった。

それになんだか嫌な予感がしてハッとして庭を見ると、“彼女”を背負う泥だらけの巌勝と目が合った。


「うわーー!!」


やばいすっかり忘れてた。

急に叫んだ私に目を丸くした実弥と泣き出した赤ちゃんを放り出して、私は庭に飛び出した。


「おい、お前どこ行くつもりだ…ってテメェなんで家の庭にいやがる!!」

「あまりにも静かだったからついに死者が出たのかと思って見に来ただけだ。」

「何言ってんだテメェ。」


実弥は怒っていたけど赤ちゃんが泣いていたのでいつもより声量は抑えめだった。


「ごめんね巌勝!!忘れてたの!!」

「……今私の両手が塞がっていることを末代まで感謝して咽び泣くんだな。」


それは両手が空いていたらどうなったかわからないくらい怒ってるってこと??


「話は済んだのか?」

「…えーっと」


私は振り返って、庭にいる私たちを睨みながら器用に赤子をあやす実弥に目を向けた。


「どうだろう。済んだのかな…。」

「お前がそんな風に言ったなら終わったんだな。」

「………でも結局、いつも同じ話をしてその繰り返しな気がするのよね。」

「それでいいだろう。」


巌勝ははあ、とため息をついた。


「案外そんなものだ。」

「……上から目線。」

「上だからな。」


ふん、と鼻を鳴らす彼の背中で、モゾモゾと“彼女”が動いた。


「…ここ……」

「!目が覚めたの?」

「…………いやだ、きもちわるい、やまにかえりたい…」 


彼女は私には返事をせず、巌勝の背中でカタカタと震えていた。


「大丈夫?」

「う、うう」

「………もう限界みたいだな。」


巌勝の言葉が重くのしかかる。


「……そっか、太陽…」


もうとっくに朝日が登っていた。

どうしてずっとあの山にいたのかようやく分かった。


薬で手に入れた偽物の鬼の体。
薬は完璧だった。太陽の光も決して脅威ではない。


しかし、薬は薬だ。


時間が経てば効き目も薄れるのだ。
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