第91章 ただ一つの願いから
あまりの痛さに目が点になる。
畳の上に尻餅をつくと、実弥はぐいっと詰め寄ってきた。
「だから!お前の歪んだ『愛してる』の認識も含めて俺は全部愛してるんだよ!!」
……ていうか頭突き当たったおでこがすごく痛いんだけど。謝ってほしい。
「だけどはっきりと言っておくぞ。」
「……何?」
「のいないところに俺の幸せはない。」
「……………」
「お前、何回俺から逃げようがそれだけは忘れるなよ。」
それを聞いてなんだか昔のことを思い出した。
昔、『お前の幸せはどこにあるんだ』と聞かれた。
私は『みんなのところにあるよ』と答えた。
深い意味はなかった。
でも、私のいないところでみんなが笑っていることが幸せだったし、愛してるって言うのを伝える一つの手段だと思っていたから、それが適切だったんだと思う。
私がいる場所じゃないと幸せがないなんて、可哀想な人。
「……………だから、全然わかんないよ。」
痛む額を抑えていると、実弥がそこに手を添えた。
「一発入った。」
「…は?」
「これで一勝だな。」
何を言っているのかわからなかったが、だんだんと頭がはっきりしてきた。
「えっ、一発って何、手合わせってこと!?」
「今のは俺の勝ちだろ。あー、お前頭もかてぇのか。いって。」
「は?は??私の負け…!?って言うのか今のは違うでしょ!?」
実弥の額も真っ赤になっていた。彼も一応ダメージはあったらしい。
「今のズルでしょ?私の負けじゃないでしょ??」
「は?勝ち負けにズルがあるかよ。……っていう風に、どこかの誰かさんに教わったけどなぁ。
「……」
ひとまず、そんなことを教えたであろう過去の私は許さない。