第13章 出会いは始まり
ひとまず泣き叫ぶことは無くなったが、いまだにぐずぐずと泣き続けていた。
「あ、あの〜、その、今日ご一緒にここまで来られた方は…」
「…?」
なぜか敬語になってしまい、慌てて言い直した。
「僕、一人?」
「……ママ、パパ。」
「…はぐれちゃったのかな?」
優しく語りかけて微笑みかけると、男の子も泣き止んだ。
「…いにゃいの」
「しょっかあ〜いにゃいのか〜!!」
やばい、舌足らずなの超可愛い…
って、そんなこと言ってる場合ではないな。ううん、親とはぐれたってことは…迷子、だよね。
ここは公園。迷子センターなんてもちろん存在はしない。…私が探してあげるしかないかな。
でもここら辺をうろうろしてたってことは、すぐに親が探しにくるかもだし…。
「…じゃあ、もうちょっとここで待ってよう。ね?」
「ん」
男の子はわかっているのかいないのかよくわからない返事をした。こんなに小さかったらわからないよね…。
とりあえず実弥には『迷子の男の子がいたから放っておけない。遅くなる。』とスマホでメッセージを送っておいた。
「グーチョキパーで、何作ろ〜」
「うー、うー!」
男の子がまた泣かないように、しゃがみ込んだまま適当に手遊びで場を繋ぐ。うう、奇跡起きないかな〜。この子の親、来てくれないかな〜!
「右手はチョキで、左手はチョキで、カーニーさん、カーニーさん」
「カニしゃ〜カニしゃ〜」
「そうそう、上手上手……」
男の子が上機嫌で遊んでいる中、私はピリッとした空気を感じ取って顔を上げた。
するとそこには体の大きな長髪の男が立っていた。逆光のせいかよく顔が見えなかった。
「!」
いつの間に。
いくら男の子の相手をしてたからって、親が来るのを待っていたわけだから周囲の警戒を怠ってはいなかった。
こんなに近くにいたのに気づかないなんて…。不審者とかだったらどうしよう…!!
と、警戒してビクビクしていたら男は無言で私に手を伸ばした。
咄嗟に身構えるも、男は私がかぶっていたキャップを取り上げただけだった。驚いて顔をあげる。
その顔を見た時、鈍い頭痛のようなそんな痛みに襲われた。
「阿国、なのか」
震える声で男が話す。
私は何も言えずに、男の顔に浮かぶ痣を凝視していた。