第13章 出会いは始まり
3時間ほどそうしていたが、そろそろ帰ろう…ということになり、片付けを始める。
「トイレ行ってくるから荷物頼んでいい〜?」
「あ?じゃあ俺もついて行くから…。」
「は!?そこまでついてこなくていいです!!」
「アホか!外で荷物持って待ってるって言ってんだよ!!」
あ、そう言うことか…。
「いいよいいよ、荷物多いし大変でしょ?ここで待ってて。」
「…何かあったら連絡入れろよ。」
「私は子供か。」
むすっと頬を膨らませて貸してくれたキャップを目深にかぶる。貴重品の入ったカバンだけを持ってその場を後にした。
…なんていうか、すっごい過保護?いや、心配してくれてるだけなんだろうけど。
……あんなことになってたくさん苦労かけちゃったからな。私が偉そうに言えたことじゃない。私が実弥の立場だったらすごく心配だろうし。
よし。さっさと帰ろう。
うだうだ考え事してる場合じゃない。実弥にはたくさん嫌な思いをさせてきた。これ以上は嫌だ。
さっさとトイレを済ませて外に出る。手をハンカチで拭いていると、クイっと服の裾が引っぱられた。
「ん?」
どこかに引っ掛けたかと思って視線を下に下げると、そこにいたのは小さな男の子だった。
曇りのない大きな瞳で私を見上げている。
「抱っこぉ」
「えっ?」
間抜けな声が出た。
…?こんな子知らないんだけど…。
「ママ、抱っこぉ。」
「ま、ママ?」
ハンカチをカバンにしまってあたりをキョロキョロと見渡した。
…うん。ここには私しかいないな!?しかもこの子の保護者らしき人もいないな!?
「わ、私はママじゃないよぉ〜」
しゃがんで目線を合わせると、その子の目にじわじわと涙がたまっているのが見えた。
あ、これやばい。
私の第六感が確かにそう叫んでいた。
「うわあああああああー!ママあああああ!!!」
「おっ、あ。お、おおお、な、泣かないでえええ!!」
案の定泣き出してしまった男の子に、情けないことに私はオロオロと取り乱してしまった。