第88章 明けない夜はない
幸せになんてなってたまるか。
幸せなんて偶像だ。
幸せなんて一瞬で終わる。
ああ、知っていた。知っていたんだよ私は。
幸せが消える瞬間ほど苦しいことはない。
陽明くんも、阿国も、私も。
誰よりもそれを知っている。
「_______意味は」
それでも。
「意味は…っ!!」
でも。
「……っ」
怖かったの。
私、臆病者で、泣き虫だから。
本当に怖かったの。
「っ!!!!!」
怖いときに、誰もそばにいてくれないことが本当に怖かったの。
実弥と出会って知ったよ。他人の体温が優しいこと、涙が出たら拭ってくれるのが嬉しいこと。
だけど彼が消えたら?
ねえ
君は私がいないと嫌だって言ったね。
違うよ
本当に私のこと、全くわかってないなぁ
気がつけば地面に倒れていた。
彼女がただ私を見下ろしている。
「……終わりたいんだ」
その声が悲痛で。
「やめて。」
「生まれてきたことを何度憎んだか、お前は知っているだろう。」
「ねえお願いやめて」
「私はこの世界に生きていたって意味がないんだ。」
「言わないで」
私が、目を逸らしていたことを。
「みんなに言ってもらったよ、生きろって、お前は必要だったって。けどさ。」
彼女は、
「周りがなんと言おうと私がそう思えなければそれこそ無意味だろう。」
ねぇ
やめて
それい、じょうは
それ以上は
わたし
わたし、ほんとうに
こわれ「!!」
その時、腕を引っ張られた。
巌勝だった。