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キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第87章 嘘はつかないから


確信した。


(絶対、“あの子”だ)


私は一歩前に進んだ。


「」


その時名前を呼ばれてハッとして振り返った。


「どこに行くんだ?」


不安そうな顔をした実弥が赤ちゃんを抱っこしてそこにいた。
お風呂から上がったばかりなのか、髪の毛が濡れたままだ。


「何かあったのか?どうした?」


________何かあったのか?どうした?


ピキッと頭が痛んだ。

あれ…?


今の、誰の声…?


「」


____


……。


(行かなきゃ。)


なんでか強くそう思った。
行かないといけない。声の主を追いかけて、あの猫を見つけないと。

でも私は動けなかった。


だって目の前に1番大切にしないといけないものがあったから。


「………ごめん…」


私はもうそれ以上、足を動かせなかった。


「どうかしてた、戻る。」

「は?おい、どうしたんだよ。なんで急に家を出たりしたんだ?」

「…ううん、気のせいだった。なんでもなかったよ。」


頭を抱えるしかない。

…いったいどうしたっていうんだ。


……………多分、前の私なら迷わず実弥を置いて走り出していただろう。
でももうそんなことはしない。できない。私は疲れ果てた。

自分が何をしたいのか、本当にそれでいいのか、自信が持てない。


ただ今は怖いだけ。


実弥と赤ちゃんがいないと、不安でたまらないだけ。


休まないと。
そうだ、休まないといけない。


………きっと今は疲れてるから、変な気を起こすんだ。


………………だって大切なものはもうあるんだから、これ以上は何も望まない。

それでいいでしょう?


そう。それでいいはずなんだ。


それなのに、まだ走り出そうとしている自分がいることに、私は戸惑っていた。


(…たとえ、あの猫が“あの子”だったとしても、追いかける必要はない。)


………でもそれならどうして私のところに来たの?


ああ、わからないわからない。考えれば考えるほど追いかけなくちゃ、行かなきゃと思う。

ダメだ。


大切なものは、離せない。生きていくって決めたんだから。

………生きたいから、ここにいるって決めたんだもの。実弥に支えてもらってるんだもの。
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