第87章 嘘はつかないから
優鈴はみんなの様子に深く深くため息をついた。
「入る前に言えって…言ってほしいのかほしくないのかどっちなの?僕難しいことわからないんだけど?」
…それもそうだ。
「……言ってほしくなぁあああい!!」
ついに先輩は畳にうずくまっておいおいと泣いてしまった。
「…え?お前、鬼は平気なのにお化けはダメなのか?」
「お化けって言わないで!!聞きたくもない!!」
……意外な弱点が判明した。
そうか、幽霊系苦手だったのか。
「でも、優鈴が何も言わなかったってことは悪いもんじゃなかったんだろ?」
「ああ………悪いもん…」
優鈴は実弥の言葉に首を捻った。
「ああ、うん。悪いもんじゃなかったんだと思うよ。」
その物言いいに少し違和感を覚えたが、そう感じたのは私だけのようだ。
悪いものじゃなかったら『悪いものじゃない』って言うよね?でも『悪いものじゃなかった』…って、それ。
元は悪いものだったってことでは?
それに、まだ気になることがある。
______神社の神殿に何かが書かれた木の札
みんながギャアギャア騒いでいる間、私はなぜかそれがひっかかった。
それって、もしかしたら夢の中で見たものと一致しないだろうか。平安時代の夢。陽明くんが死んだあの場所。
陽明くんが死んだ後、神社は続いたはずだ。でも阿国の時代に焼けて消えた。
でも、神社は今も続いている。
あの神社は続いているが、鎮魂が不十分な状態だ。
_________ならばあの神社が存在する意味はあるのか?
もしかして
「…ねぇ、その神社って……」
「シー」
私が何か聞こうとすると、優鈴が小声でそう言って止めてきた。おかげで誰も気づいていない。
「、ちゃんと陽明くんに連絡入れてるからお前は首突っ込まないで。」
「…でも」
「良いから。…今は休んでて。まだ気持ちの整理もできてないでしょ?」
みんなが盛り上がっている中、私と優鈴はそんな話をしていた。
「……ごめん」
「良いって。」
正直今の私に何かできるとは思わなかった。…何か力になれるならしたいけど、いた方が迷惑だよね。
優鈴がぶっきらぼうにそう言って、それを最後に私たちは話さなかった。