第87章 嘘はつかないから
「そうなのよぉ〜!ねぇ聞いてー!」
やたらとヒステリックに叫ぶので思わず肩がビクッと震えた。
「この先に神社があったんだけどね、これがもうすっごくホラーなのよ!!」
「はぁ?怖い話?」
「そうそう。それ僕らも見たー。買い物の帰りに寄ったんだよ。ね、不死川。」
「あぁ…。でもあれ、一体なんだったんだろうな。」
すると空気が一気に不穏に。
神社…あぁ、ここに来たばかりの頃、アマモリくんと一緒に行ったあの神社か。
どうやら買い物に行っていた三人で通り道にあった神社に寄ったらしいが、三人とも顔色が悪い。…それほど怖いものがあったのだろうか?
「何それ、超気になる。教えてよ。」
「私も聞きたいです。」
桜くんと春風さんはワクワクした様子で身を乗り出した。
「なんつーか…神殿?そこの扉が開いてたんスよ。」
実弥が青い顔のまま話し始めた。
「そしたら中に木の札がズラーーーっと飾ってあって…古い文字だったんで何書いてるかわからなかったんですけど、とにかく不気味でした。」
「ふ、札?」
「ああ。もう数えきれねェくらいあった。」
「なんか綺麗に飾ってあるのもまた変なのよねぇ。あれって御神体?なのかしら。しかもなんで扉が開いていたのかもわからないし。あたりに管理者っぽい人なんていなかったわ。無人よ無人。」
天晴先輩は恐怖を紛らわすように大袈裟に言った。
「優鈴は?」
「ん?僕?」
「何も見えなかったの?」
「……あー…」
目に見えないはずのものが見える優鈴。彼なら何か見たのではないだろうか。
どうやら実弥も先輩もそこまで頭が回っていなかったのか、今更ながらにぎょっとしていた。春風さんと桜くんは初めて怯えたように悲鳴をあげ、ぎゅっと抱きしめあっていた。
「ちょっ、そこまで行くとリアルホラーっていうか。」
「僕はね…」
「いい!いいですよ優鈴くん!!どうか何も言わないで!!」
「え!?言わない方がいいの!?」
「てことはお前何か見えてたのかよ!!」
「いやーー!!それならどうして神社に入る前に言わないの!!何もついてきてないでしょうね!?」
優鈴はニコッと笑う。
…何も話さない。
うん、なんとなくわかる。多分何もついて来てないんだろう。でも神社には確かに何かがいたと。うん。怖い。