第86章 ノスタルジー
というわけで。
三人で水回りのチェックや屋根の補強等。
とはいえ。
私は動いたらダメだと二人が聞かないので私は見学役。
「怪我しないでね」
「へーきへーき」
作業中に声をかけると二人とも笑顔でそう言った。
そして作業中に赤ちゃんがギャン泣き。私は泣き止ませようとブラブラ歩いて揺すったりミルクあげたり色々やってみた。ここ最近になってようやく抱っこできるようになったのだ。
「泣きやめ泣きやめ」
「ぎゃーぎゃあ、ああ、あーん」
「君が泣いても叫んでも怖くないよ」
かわいそうなくらい泣くのだが。…ううん、実弥はどうやって泣き止ませてたんだろう。
…そういえば、実弥はいつも笑ってたな。
「ぎゃー!氷雨サン、物落とさないでよ!」
「あ、すみませんすみません」
「ったく、気を付けて降りてきてよー」
慌てて縁側から外にいる二人のところに顔をのぞかせる。
「ねぇ、二人とも」
「えっきゃー赤ちゃん抱っこしてるぅ!どーしたの霧雨さん!」
「私を笑わせて」
「「は?」」
二人はポカンとしていた。
でもわからないなりに私の要望を叶えようとしてくれて熱心に相手になってくれた。
「布団がふっとんだ…みたいなこと?」
「こしょこしょとかですか?」
「…あんまり面白くないかも。」
「あっ」
すると桜くんが声をあげた。
「はい、いないいないばあー」
………。
「え、ねぇ待って反応してよ恥ずかしいじゃんっ」
「…ハカナ」
「あわれまないでよっ!!!」
桜くんが怒鳴ると赤ちゃんはより一層泣いた。
「あぁ、赤ちゃん泣き止ませたかったのか。」
「それならなんでさんを笑わせる必要が???」
「………やれ仕方ない。」
私はため息をついた。
「こうなったら」
赤ちゃんを抱く手に力を入れる。
「ええ!?霧雨さんそれはダメじゃない!?落ち着こうよ!!パワーじゃ何も解決しないよ!?暴力はダメだよ!?」
「落ち着いてください!!自暴自棄にならないで!!赤ちゃんは泣くものですし……。」
私はひょいっと赤ちゃんを持ち上げた。
「…高い高い」
「うわああああああああああん」
「「ズコーーーっ!」」
なぜか2人が盛大にずっこけ、私の行動を見て驚いていた。