第5章 街へ
「わぁ・・・こっちも素敵ですね」
店主が持つリボンを目にした名前の表情がパッと輝いた。
彼女は組紐とリボンを見比べると、何故かうんうんと悩み始める。
「ん~・・・どっちも可愛いけど、でも金銭的に二つも買うのはちょっと・・・」
名前は先日隠を通して自分の身に付けていた装飾品の一部を売却し、この時代の金銭をある程度手にしていた。
けれどそれは、今のところ働き口も収入も無い彼女の貴重な財産であり、余り無駄遣いは出来ない。
「店主!これを二つとも貰おう!」
「え?」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
「ええ?」
名前の隣で腕を組む杏寿郎と、組紐とリボンを手に店の奥へと消えて行く店主のやり取りに、名前はオロオロとする。
杏寿郎は何か言いたそうにしている名前を敢えて無視し、直ぐに商品を包んで戻って来た店主に代金を支払って包みを受け取った。
「毎度有難う御座いました。またのご利用をお待ちしております」
「うむ、世話になった!」
「ちょっ・・・待って、煉獄さん!」
お辞儀をする店主に背を向けてさっさと歩き出す杏寿郎を、名前は少し慌てて追いかけた。