第5章 街へ
煉獄さんに手を引かれて歩いていると、煌びやかな装飾品が幾つか飾られているショーウインドウが目についた。
少しだけ歩みの遅くなった私に気付いた煉獄さんが、店の前で立ち止まる。
「小間物屋か・・・入ってみるか?」
「いいんですか?」
「うむ!」
店内へ一歩踏み込むと、微かに白檀の薫りがした。
様々な商品が所狭しと並ぶ中、店の一角の平台に綺麗な簪や櫛、色とりどりの組紐が並べられている。
近寄ってじっくりと見ていたら、隣に立つ煉獄さんが何か気に入ったのはあるかと聞いてきた。
「あ、この色!」
朱と橙と黄の三色の糸で編まれた細長い組紐を指差して「煉獄さんの色です」と言って私が笑うと、煉獄さんはキョトンとする。
「結構可愛いかも。細めだし髪の毛結ぶのに使えるかな・・・」
店主に許可を得て組紐を手に取り、近くにあった鏡の前で、自分の頭に組紐を近付けた。
私の髪は真っ黒だから煉獄さんカラー(勝手に命名)はちょっと目立つかな。
「大変お似合いですよ。お客様、こちらの商品も御一緒に如何ですか?」
私の様子を見ていた店主が、金の糸で縁取られた朱色のリボンを見せてくれた。
それは光沢のある生地で、少しばかり高級感が漂っている。