第5章 街へ
私がオムレツライス一皿を完食する間に、煉獄さんは追加で頼んだカレーとビフテキもお腹に収めていた。
途中ビフテキを食べる彼と目が合うと、何故か一切れ分け与えられた。
頂いた牛肉は柔らかくて美味しかったけれど、そんなに私は物欲しそうな顔をしていたのだろうか?
「ご馳走様でした」
「うむ!」
「あの、お金を・・・」
「俺が誘ったのだから君は気にしなくていい」
素早く支払いを済ませてしまった煉獄さんに声を掛けると、有無を言わせず笑顔で断られた。
一応私も少しは持ち合わせがあったけれど、彼に「ここは俺に顔を立てさせてくれ」とまで言われてしまえば大人しく引き下がるしかない。
私は店の外へと足を向ける煉獄さんの背を追った。
「さて、暗くなる前に帰らなければな」
「・・・そうですね」
遅い昼食でお腹は満たされた。
だけど私の中の探究心が、もう少しだけ街を歩いてみたいと言っている。
名残惜しくて街の中心部を眺めていたら、ヒョイと右手を取られた。
「煉獄さん?」
「もう少しだけ付き合ってくれないか」
少しだけ眼を細めて微笑む煉獄さんが格好良くて、私は胸をドキドキさせながら頷いた。