第5章 街へ
「うまい!」
いただきますと手を合わせ、オムレツライスを一口食べるなり、うまい!うまい!と声を上げ続ける煉獄さん。
初めてこの状態の彼を見た時はかなり驚いたけど、度々お八つや食事を一緒に食べている今ではもう慣れた。
流石に外でやられると目立つというか、周囲の視線が痛い。
だけど煉獄さんは『うまい』と上げる声こそ大きいが、食べ方自体はとても綺麗だと思う。
チラッと横に居た父娘へ視線を向けると、そんな煉獄さんの様子に暫く唖然とした後、父親は黙礼しながら娘の肩を抱いて去って行った。
「うまい!」
「ホントに美味しいですね。でも煉獄さん、もう少し声のボリューム抑えないと他のお客さんに迷惑ですよー」
「む、すまない、つい癖が出てしまった!ところでぼりゅうむとは何だろうか?」
「ああ、ボリュームは英語で音量とか容量といった意味を持つ言葉なんです。未来では割りとポピュラー・・・ええと、日常的に使われていますね」
「英語か!君は会話に聞き慣れない外国語をよく交ぜるが・・・うむ、苗字は博識なんだな!」
「そんな事無いと思いますけど・・・?」
オムレツライスをあっという間に平らげた煉獄さんとそんなやり取りをしつつ、次の料理に手を付けた瞬間またもや元気良く『うまい』を連呼する彼を前に、私は苦笑してしまうのだった。