第5章 街へ
「そうか君があの時の・・・娘を助けてくれて有難う!若いのに感心な事だ、いや本当に有難う!」
キョトンとした煉獄さんの肩をバシバシと叩きながら笑う人は、少し前までの厳つい顔の大男ではなく、ただの人の良いおじさんといった感じだ。
いつの間にかその隣に立つ娘さんが、煉獄さんの手を両手で握り締めて振る。
何となくそれを見たらモヤッとした。
「もう三年以上経ちますが、あの時は色々と錯乱しておりましたので、ろくに御礼も言えずに申し訳ありませんでした。こうして再び出会えたのも何かの縁、是非とも「人違いだ!」」
されるがままだった煉獄さんは一言放ち、スルリと娘さんの手から自身の手を引き抜いた。
「え、人違い?そんな筈は・・・」
「俺と貴女は初対面です!三年以上前ならば、それはおそらく前炎柱だろう!」
「前、炎柱?」
「鬼殺隊の人間が鬼から人を救うのは当然の事、過度な礼は不要です!」
「え、あ、でも・・・!」
「前炎柱には俺から伝えておこう!うむ、この話はこれでお終いだな!」
バッサリと会話を切る煉獄さんに、父娘はポカンとしている。
そこへウエイトレスさんが料理を運んできた。