第5章 街へ
ここは恋柱の甘露寺さんお薦めのお店で、割りと最近出来たばかりの洋食屋さんらしい。
前回頂いたどら焼きといい今回のこのお店といい、甘露寺さんという方は食通なのだろうか?
お品書きには手書きで看板メニューのオムレツライスの他に、様々な料理名が書かれていた。
「私はこのオムレツライスにします」
「うむ!俺もそれを頼もう!後このカツレツとビーフシチューも頼む!」
「畏まりました」
お品書きを指差してそう言えば、水の入ったグラスをテーブルに並べるウエイトレスさんが笑顔で了承してくれた。
令和では何て事ないメニューだがここは大正時代、どんなものが出てくるのかちょっと楽しみだ。
「お腹空きましたね」
「俺はそろそろ腹と背中がくっつきそうだ!」
「あはは、私もです」
「君もか!それは大変だな!」
「はい、大変です」
二人で他愛ない会話をしていると、突然奥の方の席で怒声が響いた。
「何をやっとるか!貴様等ー!」
けたたましいそれに思わず振り向いて視線を向けると、そこには厳つい顔をした禿げ頭の大男が、小綺麗な格好をした可愛らしい女性の肩に手を置くチンピラ風な若い二人組の男達を睨みつけている姿があった。