第4章 ギフト
「・・・む?」
杏寿郎は名前を探して道場へと向かう道すがら、違和感にふと足を止めた。
確か自分は名前を見舞う合間に、炭治郎達の稽古を見ていなかっただろうか。
そうして、名前が自分の渡した菓子を口に含み、嬉しそうに笑みを浮かべる姿を見て、微笑ましく思った。
「これは・・・よもや」
杏寿郎はハッとした。
彼女の手に渡った筈の見舞いの品が、自分の手にあるのは何故か。
幾度も経験したからこそ杏寿郎は分かる。
これは、時が戻ったのだと。
「苗字!?」
焦った杏寿郎は、思わず見舞いの品の入った巾着を握り締め、脇目も振らず道場へ走った。
「苗字!!」
駆け込んだ先、広い道場の壁際にポツンと置かれた椅子に座る名前の正面を陣取ると、片膝を付いてその小さく華奢な手を取った。
見上げる彼女の顔は、記憶にあるものと違って少し青ざめている。
「煉獄、さん・・・?」
名前が自分の事を覚えている事に、杏寿郎は少しだけホッとした。