第3章 鬼殺隊と鬼
「今日の苗字は謝ってばかりだな」
煉獄さんがフッと笑う気配を感じた。
彼はいつものハキハキとした喋り方ではなく、声のトーンを抑えて私に語り掛けてくる。
「謝る必要は無いし、俺は君の事を迷惑だと思っていないぞ」
優しいその声音に、幾度となく夢で見た、今際の際の彼の笑顔がふと呼び起こされる。
どんなにリアルでも、あれは夢で現実じゃない。
煉獄さんは今ちゃんと生きていて、触れる事も会話をする事も出来る。
だけど、同仕様も無く不安に駆られる。
鬼殺隊については色々な人に聞いた。
鬼を狩る事は常に死と隣り合わせなんだと。
どんなに身体を鍛えたとしても、鬼と違って欠損した肉体は戻らない。
何度死線を潜り抜けたとしても、次に生き残れるとは限らない。
未来は誰にも分からないのだから。
もしも、本当に鬼と戦える力が私にあるというのなら、彼等を救う事が出来るだろうか。