第3章 鬼殺隊と鬼
暫くして落ち着きを取り戻した名前に杏寿郎は尋ねた。
「もう一度最初から話そう、苗字。君が自身の事を名前以外思い出せないと言った言葉に嘘は無い。そうだな?」
「はい・・・」
「では、この大正の世を過去だと思ったのは何故だ?」
「先の世の義務教育では子供は誰もが最低でも九年間学校に通い、そこで文字の読み書きや算術、歴史等の様々な事を学びます。ですから大正が私の生きていた時代、令和から凡そ百年遡った時代だという事は知っていました」
「なるほど。つまり君は自身の事以外なら分かるのだな?」
「常識の範囲内なら、ですけど」
腕を組んだ杏寿郎は、まじまじと名前の持つスマホを眺めた。
「では、君の持つそれについて聞いてもいいか?」
「これは離れた相手と通話する小型機器です。他にも写真や動画を撮ったり、調べものをしたり、娯楽に使用したり出来ますが、ある程度のお金さえあれば誰でも所有できます」
「うむ、よく分からんが凄いな!」