第3章 鬼殺隊と鬼
あ、もしかして私の事を監視してるのかな。
自分で言うのも可笑しな話だけど、突然何処からともなく現れて記憶が無いとか、やっぱり物凄く怪しい人間だと思う。
今日本部へ連行されるのは、ついに私の沙汰が決まったからなのかもしれない。
「そろそろ着くぞ!苗字」
「!」
風に乗って藤の花の香りがしてきた。
確か鬼が苦手とする花なんだっけ。
蝶屋敷もそうだけど、花が咲く時期じゃないから本当に不思議だと思う。
暫くして私はやっと目隠し抱っこから解放された。
外の明るさに目を慣らしていると、少しざらついた硬く大きな掌が私の右手をそっと握る。
一瞬ドキリとして、繋がれた手から上へと視線を辿っていくと、ニコリと笑う煉獄さんが私を見下ろしていた。
「此方だ苗字」
この人はもっと、自分の顔の破壊力を知っておくべきだと思う。
羞恥に顔を朱くしながら煉獄さんに手を引かれて歩いて行くと、大きなお屋敷の縁側に辿り着いた。
何だか時代劇の取り調べの場所みたい。
ぼんやりと広い畳の部屋を見ていると、奥の襖がスーッと開いた。