第3章 鬼殺隊と鬼
それを聞いてから、私は断片的な夢をよく見る様になった。
まるでジグソーパズルのピースみたいなそれらは、多分私の失われた記憶の一部なんだと思う。
「苗字、どうかしたのか?」
炎の様な色味の隻眼をキョトンと瞬かせ、彼は首を傾げていた。
同色のフワフワした髪といい、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを与える容姿を持つ彼は"煉獄 杏寿郎"さん。
夢の中で最も多く見るのが、目の前に居るこの人が死んでしまう場面だった。
あまりにも見る回数が多いから、あれがただの夢ではなく、これから起こる事なのではないかと少し不安になる。
「いえ・・・何でもないです。いつもお見舞いと沢山のお菓子を有難うございます、煉獄さん」
「うむ、甘露寺からこの店のどら焼きがとてもうまいと聞いてな!皆で食べてくれ」
歴史上、人喰い鬼なんてものの存在はお伽噺にしかない。
だとすると、私は一体どこのファンタジー世界に迷い込んだのだろうか。