第2章 代償
「煉獄さーん!」
杏寿郎がこの蝶屋敷を訪れた理由は、目覚めた名前を見舞う事ともう一つ。
それは此方に向かって駆けてくる少年にあった。
鍛練中だったのか、杏寿郎の前に立つ炭治郎の額にはびっしりと汗が浮いている。
「少年!随分と励んでいる様だな、その心意気や良し!」
「はいっ!」
杏寿郎は組んでいた腕を解くと、ニッコリ笑って炭治郎の頭をわしわしと撫でた。
「ところで、先日伝えた歴代の炎柱の手記の事なのだが!」
「ヒノカミ神楽の事、何か分かったんですか!?」
思わず身を乗り出す炭治郎だったが、例のごとく視線の合わない杏寿郎は腕を組み大きく声を張った。
「うむ!何も分からなかった!」