第2章 代償
「!」
扉を開けて部屋の中へ入ろうとしていた少女は、私と目が合った瞬間手に持っていた物を落とした。
ガシャン!と大きな音が響き、次いで少女が『しのぶ様!』と叫びながら踵を返して行った。
暫くして、開け放たれたままの扉から不思議な格好の小柄な女性が入ってきた。
彼女は私に近付くなりニッコリと綺麗な笑顔を浮かべた。
「ご気分はいかがですか?」
優しい声音の、何処か浮世離れした美しいその人は "胡蝶しのぶ" と名乗った。
怪我の状態を確認したり脈や体温を測ったりとテキパキ動くその様子から、おそらくは医療従事者なのだろう。
その場で私は、列車事故に巻き込まれて大怪我を負った事、蝶屋敷というこの場所に運び込まれて2週間も昏睡状態だった事等を説明された。
「お嬢さんのお名前を伺っても宜しいでしょうか?」