第2章 代償
ベッドに横になったまま扉の向こうに消えて行く後ろ姿を見送った私は、何故か不思議な感覚に囚われていた。
何だろう、あの人の持つ金と赤の炎の様な色彩を思い出すと、何かが胸の奥でざわつく。
「あ、あれ・・・」
視界がどんどんぼやけて揺れる。
泣く理由なんて何処にも無いはずなのに、涙が止めどなく溢れてきては、目尻を伝い流れ落ちた。
「っ・・・いっ・・・」
ヒクリと嗚咽を漏らすと途端に鳩尾の辺りが痛み、細く息を吐いて痛みを逃す。
私の身体はあちこち怪我だらけで、肋骨が三本と左腕の骨が折れているらしい。
左肩には広範囲の裂傷があり、そちらは消毒の度に目を反らしてしまう位にはエグい状態だ。
「ふぅ・・・」
どうにかこうにか涙を抑え、鼻を啜りながらぼんやりと天井を見上げる。
そもそも、何で私はこんな事になっているんだろう。
眉間にシワを寄せつつ思い起こすのは、私が意識を取り戻した日の事。