第2章 代償
アオイはまっすぐに杏寿郎の目を見ると、それから不思議そうに首を傾げた。
「炎柱様は任務後に怪我の処置で此処へ運ばれてきた時からずっと、名前さんの事を気に掛けているご様子でした。彼女は偶然その場に居合わせただけなのに、何故ですか?」
「・・・」
確かに彼女とはあの時に初めて会った。
それまでは勿論、姿を見た事も無ければその名を耳にする事も無かった。
けれど、あの朝焼けの中で言葉を交わした瞬間、杏寿郎は思い出したのだ。
繰り返された時の中で、自分が死ぬ間際に何度も何度も聞こえてきた声があった事を。
『死なないで・・・死なないで、杏寿郎!』
『嫌だ・・・嫌だ!!』
胸が締め付けられる様な、とても悲痛な声だった。