第2章 代償
アオイと揃って名前の病室を後にした杏寿郎は、どうしたものかと腕を組んだ。
「彼女の記憶は戻るのであろうか?」
「分かりません。しのぶ様は怪我の後遺症ではないかと仰られていました。稀に隊士の方でも戦闘で負傷した為に記憶が消えてしまう事があります。それは主に頭部を損傷したり、心に傷を受けたりした場合です」
アオイがトンと指先で自分の頭や胸元を差す。
「何かの切っ掛けでふと記憶が甦る事もあれば、逆にそのままずっと思い出せない事もあります。況してや彼女は一般人なので、上弦の鬼との戦闘に巻き込まれたとなれば、心も身体もどれだけ衝撃を受けたか推し量れません」
「む・・・そう、か」
杏寿郎はアオイの言葉に落胆が隠せないでいた。
「・・・炎柱様、名前さんとは先の任務で初めてお会いになったんですよね?」
「うむ、そうだが?」