第2章 代償
「失礼する!」
入室の許可を得た杏寿郎が部屋に入ると、窓際のベッドの上に横になる名前の姿があった。
その側に立つアオイが彼女に語り掛ける。
「名前さん、この方が炎柱の煉獄さんです」
「えん、ばしら・・・? 煉獄、さん・・・ええと・・・私を助けてくれた人、ですか?」
「ええ、そうです」
杏寿郎は二人の会話に思わず首を傾げた。
アオイから杏寿郎に視線を移した名前は、へにょりと眉をハの字に下げると、曖昧な表情で微笑んだ。
「あの、煉獄さん、こんな姿でごめんなさい。助けて下さって有難うございました」
「む?俺が君を助けたのではなく、君が俺を助けてくれたのだが?」
「はい?」
「君がいなければ俺は鬼に殺されていた!礼を言うのは俺の方だ、有難う!」
「お、に?・・・あ、あの、何の事でしょう・・・?」