第2章 代償
待ち望んだ件の女性が意識を取り戻したのは、それから更に四日後の事だった。
数日ぶりに杏寿郎が蝶屋敷を訪れると、そこに胡蝶の姿はなかった。
代わりに対応した神崎アオイの後をついて歩き、暫くして一つの扉の前で止まる。
「それでは炎柱様、此方で少々お待ち下さい」
「うむ!」
「名前さんは絶対安静なので、会話は手短にお願いします」
「名前?」
「彼女の名前です。苗字 名前さんというそうです」
看護師の少女はそう言って白い扉をトントンと軽く叩き、部屋の中へ入っていった。
「苗字 名前、か。うむ、やはり知らぬ名だな」