第1章 死なせない
「知ってる?もうすぐ夜が明けるんだよ」
猗窩座の両手首を掴む女は耳元に口を寄せてそう囁くと、そのまま抱き付いてきた。
グッと力を込めて押さえ付けられ、その余りの力強さに戦慄する。
「なっ・・・離せっ!」
「杏寿郎ぉーっ!未だ動けるならコイツの首切って!」
「!」
背後に陽光の気配を感じ始めた。
早くこの女を引き剥がして逃げなければ!
「くそっ!どけっ女っ!うおおおおおおぁぁああああああー!!」
「っ・・・!!」
ボキリと鈍い音がして女の左腕が折れた。
力の緩んだその手から右腕の自由を取り戻すと、迫り来る杏寿郎の日輪刀をその拳で弾き、女の身を蹴り飛ばす。
その際自ら引きちぎった左腕を女に持っていかれたが構わず近くの林に向かって駆け出した。