第1章 死なせない
鬼と杏寿郎が互いの技を繰り出したその瞬間、私は二人の間に割り込んだ。
鬼の腕は私の左肩を深々と抉って杏寿郎の顔横で止まり、杏寿郎の刀は私の右肩すれすれで止まった。
三者三様の姿で一瞬動きが止まる中、先に動いたのは鬼だった。
「・・・何のつもりだ女」
瞬く間にズタボロの身体を再生させると、戦いに水を差されて憤った鬼がギロリと私を睨み付ける。
何のつもりって、杏寿郎を助けるつもりだ。
火事場の馬鹿力というか何というか、人間死ぬ気になれば何とでもなるというか。
私の決死の行動は、一先ず彼が致命傷を負うのを避けた。
「っ・・・」
肩が痛い。
腕を噛んだ自傷と比べようもない程痛い。
じわりと涙を滲ませつつ、震える手で鬼の両手首を掴んだ。