第9章 修行
どうしたら良いんだろう。
どうすれば、この先皆を痣の代償から救えるんだろう。
強く。
私は強くならないといけない。
私が与えられた力を自由に使い熟せれば、或いはこの運命に抗う事が出来るかもしれないから。
「・・・杏寿郎さん」
「ん?」
「あの、ちょっと下ろしてくれませんか。大事なお話がしたいんです」
「大事な話?」
「はい」
杏寿郎さんの腕から下ろされた私は、槇寿郎さんの元へと歩いて行く。
「槇寿郎さん、私を鍛えてくれませんか」
「「「は?」」」
槇寿郎さんと千寿郎君の目が点になっている。
ついでに何か、後から杏寿郎さんの声も聞こえた様な。
「今はこの腕が治りきっていないので、鍛練出来る事も限られます。ですが今後の事を考えると、やれる事はやっておいた方が良いと思うんです。私は自分に与えられた力を皆を助ける為に使いたいですし、その為には私自身がもっと肉体的にも精神的にも強くならないと駄目だと思うんです」
「ま、待て待て!」
「はい?」
自分の熱意を伝えようと頑張っていると、何故かストップが掛けられた。
「一つ聞くが、君は今までに何かしらの武芸を嗜んだ事はあるのか?」
「ありません・・・多分」
「多分?」
「私、過去の記憶が丸っと無いので」
槇寿郎さんは眉間を揉みながらフゥ・・・と一息吐く。
「手を見せてみなさい」
「手?」
掌を上に向けて右手を差し出すと、それを見た槇寿郎さんは難しい顔をして一言。
「まるで深窓の令嬢の様な手だな」
「深窓の令嬢・・・」
じっと自分の手を見つめていると、槇寿郎さんの手がポンと頭に乗る。
「取り敢えず、だ。そこに居る奴を納得させないと無理だろうな」
「?」
槇寿郎さんは私の背後を嫌そうに見ており、その隣に居る千寿郎君は口に手を当てて青褪めている。
え、何?
そう思った時、ガシリと肩を掴まれた。