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loop-ループ-いつか辿り着く世界【鬼滅の刃】

第9章 修行


ボカッ。
鈍い音と共に、杏寿郎の視界に火花が散る。

「っ・・・!?」

顔を真っ赤に染めて狼狽える名前の愛らしさに気を取られ過ぎた杏寿郎は、振り下ろされた木刀に頭頂部を強打される迄、縁側に立つ存在に気付けなかった。

「色惚けるのも大概にせんか、馬鹿息子」
「し、槇寿郎さん!?」

驚いた名前の振り返った先には、木刀片手に仁王立ちする槇寿郎の姿があった。
頭を押さえて唸る息子をじろりと睨み付け、槇寿郎はゆっくりと縁側から庭へ降り立つ。

「息子が迷惑を掛けてすまないな、名前さん」
「い、いえ・・・」

名前は若干困惑しつつも、心配そうに杏寿郎に声を掛けた。

「杏寿郎さん、大丈夫ですか?」
「よもやよもや。不意打ちとはいえ避けられなかった。不甲斐なし!ワハハハハ!」

軽く頭を振ると、杏寿郎は元気良く笑う。
笑う。
笑う・・・。

「あ、あの、槇寿郎さん・・・杏寿郎さん、様子がおかしくないですか?何処か打ち所が悪かったんじゃ・・・」
「問題無い。そも、柱があの程度の打撃でどうにかなる様では話にならん」
「でも、痛そうな音がしていましたよ?」
「大丈夫だ。あれはただの照れ隠しだろう」

そう言って、槇寿郎は息子に冷めた視線を向ける。
スパルタなそれに名前はうーんと唸り、意を決して笑い続ける杏寿郎に近付いた。
ほんの少し躊躇いながらも腕を伸ばすと、背伸びをして杏寿郎の頭をそっと撫でる。

「よしよし、痛いの痛いの、飛んで行けー」

フサフサとした毛先の赤い金髪は、触れると思いの外柔らかかった。
ナデナデと手を動かしつつ、これは癖になりそうな感触だなぁ等と名前が思っていれば、笑い声がピタリと止んだ。

「痛いの治りましたか?」
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